立飲み人生劇場 

立飲み人生劇場 その118
誰もが「入りにくい店」と口をそろえるが、酒も料理も、種類は豊富、値段は手ごろ。音楽好きがやってるお店
「なんや」の巻 名古屋市昭和区塩付通1の47
TEL:052-762-9289
営業時間…午後6時〜午前2時


昭和区塩付2丁目交差点をご存知だろうか。南側から行くと2本の道路が斜めに交差して、そのちょうど交わるところに「なんや」はある。ビートたけしの「コマネチ!」でいくと、その頂点(!?)に位置する絶妙のロケーション。ブルーに塗られた壁には一面の絵。入ったことがない人なら、絶対に入りにくい店である。だからこそ、のぞいてみる価値があるのではないか、と訪問。

イラスト
 
 フリージャズの沖至(おきいたる)さんの
ライブをやっていた

塩付通2の交差点。2本の道が交わるちょうどナニの部分に店がある
  塩付通2の交差点。2本の道が交わるちょうどナニの部分に店がある
 店は1階だけでなく2階にもあって、どうやらその2階で本日はジャズのライブがあるらしい。まずはビールを頼んで様子を見る。ライブ前とあって、店の姉さん兄さんも忙しく立ち働く。注文の料理や酒を持って、上へあがったり下へ降りてきたり。“飲むよりラクはなかりけり”とありがたくビールを頂戴する。
 

これが店の入口。壁の絵を見たことはあっても入ったことがない人が多いはず
これが店の入口。壁の絵を見たことはあっても入ったことがない人が多いはず  
 7時45分。2階から黒帽子をかぶった髭のおじさんが下りてきて、「トイレはどこ?」。そのいでたち、その物腰、これは紛れもないミュージシャンとお見受けした。やっぱり。店のマスターであるプヨさんが「沖至さんですよ」と教えてくれる。ほい・ほい・ほいと裸足でトイレへ行ってきた沖至さん、再び2階へ上がっていくと、ほどなくしてプォ〜ンみたいな音が聞こえてきて、どうやら演奏が始まったらしい。
 
 8時5分。私も2階へ演奏の様子を見に行く。そこでは、立ってギターの臼井さんと、座ってトランペットの沖さんが、即興演奏の真っ最中。プォー、きゅいーん、プップクプー、ぎたぎたぎた(カタカナはトランペット、ひらがながギターの音)、みたいな掛け合いがあって、二人は互いのテクニックを駆使して、いわゆる持ち玉の出し合い。沖さん、マイルスデイビスなみのミュートで渋い音を出したかと思うと、やがて胡坐(あぐら)をかいて、今度はトランペットに2個のミュートをくっつけて、プッププッぱッポー。
 

右から沖さんほか、臼井さん、隅之江さん、照喜名さんによるセッション
  右から沖さんほか、臼井さん、隅之江さん、照喜名さんによるセッション
 そのうち、大きなトランペットから小さなトランペットへ、リコーダーから縦笛も出てきて、やがては楽器を吹くのではなく、ひゅーひゅーと吸い始め、いよいよもってフリージャズ。こうして1曲目が終わったのが8時20分。そして2曲目にはトロンボーンの照喜名さん、ボーカル・ピアニカの墨之江さんも加わって、さらに演奏は続く。
 
 
 マッチョな朝倉くんは25歳の営業マン
 演奏は続いていたが、ふたたび下へ降りてきたら、そこでビールをうまそうに飲んでいたのがマッチョな若者、朝倉くん(25歳)。「なんや」にはちょくちょく足を運んで準常連客といったおもむき。体格がすごいので何かスポーツをやっていたの?と聞くと、高校時代に重量挙げをやっていたという。
 

マッチョ朝倉くん。上腕の太さは、なんと34センチもある
マッチョ朝倉くん。上腕の太さは、なんと34センチもある  
 「今は普通のサラリーマンですよ。3年目。営業ですけど、成績は抜群です」と言いながらも、一方では「今の仕事に納得がいっていないんです」とこぼす。理由は簡単。「社長になりたいんです」
 
 「社長になるんなら、今の仕事の中から何か商売のタネを見つけ出さなきゃ」と、こちらも親身になって話し込む。
 
 「資金はあるの」
 
 「それが、なかなか…」
 
 「じゃ、なにか人より秀でたものがあるとか」
 
 「いや、どうして…」
 
 「おいおい。そんなことでは社長にはなれんじゃない?」
 
 「でも、今の仕事に納得いってないんですよね」
 
 話しが堂々巡りするので、お酒の話題に切り替える。朝倉くんはずいぶんと若い自分から飲んでいたようで、ワインなどを町の酒屋さんで購入したかと思えば、居酒屋のチェーン店などにも足しげく通った。大学時代もコンパなどで、いわゆるチェーン店はほとんど制覇した実績(?)を持つとか。
 
 「なんや」のような独立系の居酒屋へ顔を出すようになったのは社会人になってからで、「始めはバイト先の知人が連れてきてくれたんですが、この店だけは入りにくかったです」と述懐する朝倉くん。
 
 横でにこやかな笑顔で聞いていた、マスターのプヨさんにも話をふる。
 

頭にまいた手ぬぐいとヒゲがトレードマークの店主、プヨ氏
  頭にまいた手ぬぐいとヒゲがトレードマークの店主、プヨ氏
 「店は、いつから?」
 
 「へ? 81年、82年、よく分からないですよ。ははは」
 
 「自慢の料理とかは?」
 
 「あ。いやいあ。どうもどうも。ははは」
 
 よく分からないのはアンタやろ!という突っ込みはグッとこらえて、「ビール、もう一本」。
 

いろんなメニューがいたるところに書き出されている。奥が厨房
いろんなメニューがいたるところに書き出されている。奥が厨房  
 マスターはあんなこと言っているけど、和風料理はもちろん、沖縄料理からタイ・ベトナム・イタリア料理まで、実に多彩。煮物や焼き物、フライにサラダ、ピザ、パスタまで、メニューはずらりラインナップ。手ごろな値段で珍しい料理まで味わえる、『亜細亜的料理屋 なんや』である。
 
立ち飲みメモ
いつもの3人で、ビール中ビン(500円)9本、生ビール(550円)1杯、イモ焼酎湯割り(450円)1杯。ゴーヤチャンプルー(450円)、ラフテー(550円)、青シソピザ(680円)、イカの七味マヨネーズ(450円)、タマネギフライ(350円)で7980円。
 
ペン:沖てる夫 絵:前田幸三 カメラ:高島誠次



いつか、横になるまで 立飲み人生劇場ナゴヤ篇 著者/沖てる夫
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いつか、横になるまで
       立飲み人生劇場ナゴヤ篇

著者/沖てる夫
体裁/四六版・172P・ソフトカバー
定価/本体価格1,300円
発効日/2003年9月25日
発行所/長征社 神戸市中央区北長狭通5-8-6
    Tel&Fax 078(371)6491

※沖てる夫(おき・てるお)
1951年愛知県生まれ。名古屋市在住
詩人、自称「酒飲み文筆家」。
作品にはブルーズバンド「憂歌団」のために書いた「おそうじオバチャン」「10ドルの恋」ほか、最近、河合塾のCMソングとなっている「嫌んなった」など多数。「立飲み」という正統派酒飲みたちの実態をあますところなく記録・保存し、後世へ伝えるために1998年から取材をつづけ、このたび本書にまとめた。

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●編集室盛り合わせ(2003年9月号/50号)
“酒屋の立ち飲みを、モノクロ写真でご紹介(その壱/立ち飲み屋さん入門)”


●編集室盛り合わせ(2003年10月号/51号)
“おかしな本があったもんだわ”

●書評はここをクリックして下さい。

●「月刊いーち」の“沖てる夫独占インタビュー”記事はここをクリックして下さい。

また、今月号の「おとくね情報」の中でこの『いつか、横になるまで 立飲み人生劇場ナゴヤ篇』の本を抽選にてプレゼント致します。奮ってご応募して下さい。待ってますよ。
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