2006年6月号、83号

星を眺めに 今月の星座「さそり座」

 灰色の雨雲が切れて梅雨が明けると、星空はすでに夏の装い。なかでも夏の代表さそり座は、熱帯地方の生き物らしく、まるで「夏はおれの季節だ」と言わんばかりに早々と南の空に駆け上がる。


さそり座の目印は、胸元で輝く赤い1等星アンタレスと、S字カーブ状に連なる見事な星の配列。しっぽは天の川に埋もれている
さそり座の目印は、胸元で輝く赤い1等星アンタレスと、S字カーブ状に連なる見事な星の配列。しっぽは天の川に埋もれている  
 さそり座の目印は、その胸元で輝く赤い1等星、アンタレス。そして2〜3等の明るい星が、見事なSの字カーブに並んで、サソリのしっぽをつくっている。この配列には古代人も気がついていて、星座誕生の地バビロニアでは、ちゃんとここにさそり座という星座を当てはめていた。なんと5000年も前のことだ。

 さてギリシャ神話では、サソリはオリオンを殺す刺客となって登場する。あのスーパースター勇者オリオンは、「オレは世界で一番強い」と自慢しては、森の動物たちを殺していた。そんな乱暴なオリオンを見た大地の女神ガイアは、このままでは自然環境が破壊されると考え、オリオン抹殺計画を立てた。そこで刺客として起用されたのがサソリだったのだ。

夏の代表的星座として7月に南の空に登場する「さそり座」。ギリシャ神話では、森の狩人オリオンを自慢の毒針で刺し殺した英雄
  夏の代表的星座として7月に南の空に登場する「さそり座」。ギリシャ神話では、森の狩人オリオンを自慢の毒針で刺し殺した英雄
 目の前に突如現われたサソリを見ると、オリオンは右足を上げて踏みつぶそうとした。そのときサソリはすかさず右に動いて、しっぽの毒針でオリオンの左足を刺した。さすがのオリオンもサソリの猛毒にはかなわない。さんざんもがき苦しみ、とうとう死んでしまった。
 女神ガイアは、サソリの功績をたたえ天に上げ、オリオンもまた勇者として天に上げた。ただし夏になってサソリが出てくると、オリオンは逃げるように西の地平線に沈んでいく。

 あまりかわいくない姿としっぽの先に猛毒の針を持つことから、なんとなく敬遠されるサソリ。星占いでも、自分の考えに忠実で、忍耐強く探究心が旺盛だが、少々無愛想で表現が直線的なので人から敬遠されることもあるとか…。

 ところで主星アンタレスとは、「火星の敵」という意味。なぜこんな名前がついたのか。それは2年に1度、アンタレスに火星が近づいて、赤さを競っているように見えるからだ。日本では、「赤星」「酒酔い星」、中国では「大火」と呼ばれ、どの名も赤い輝きを象徴している。赤く見えるのは、表面温度が低いためだが、アンタレスのことを天文学上では「赤色超巨星」といって、死を間近に控えた星なのだ。大きさは太陽の300倍もあり、やがて超新星爆発を起こすだろうと言われている。





  著者プロフィール
★浅田英夫

小学生の時から星が大好きで大好きで、そのまんま大人になっちゃった天文おじさん、48歳。日本天文学会会員で、天文関係の文書制作やイベント企画を業務とする「あさだ考房(緑区)」代表。
http://www.infonia.ne.jp/~asadapr



 

 

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