2005年5月号(70号)

 おなじみ、グリの「海外通信モノ」にニュージーランドが新しく加わった。ニュージーランドに魅せられて、ついにニュージの人となったアサミちゃん(21歳)。現在、ツアーガイドの見習いとして、オークランドで奮闘中。グリ海外特派員として、定期的に便りを届けてくれることになった。


キーウィ紀行 キーウィの国からこんにちは

キーウィってなに?
 「キーウィ」と聞くと、まず想像するのが果物のキーウィフルーツであるが、実はニュージーランドの国鳥で、飛べない鳥のことも「キーウィ」という。そしてニュージーランド人のことも「キーウィ」と呼ぶのである。
 私はこの国へ3年前に初めてやってきた。気ままに旅をするうち、すっかり魅了されてしまい、以来あの手この手でどうやったら長く居座れるかを考えてばかりいる。旅、留学をくり返し、今回はこちらの旅行会社でガイドとして就職できまいかと、野望を持って戻ってきた。
 そんなわけでただいま、ツアーガイドの研修が続く日々のなか、オークランドの街をぱたぱたと動き回っている。
 忙しい日々のなか、どよーんと心が沈むたびに私はバスの窓から海を眺める。その青さに心いやされ、「また明日も笑って生きていきますか!」という小さな希望を保ちながら、家へ帰る日々である。

ドアが開かない!
 初出勤の朝、私はホームステイ先で持ち物を全部持ったか、緊張しながら何度も鞄をチェックしていた。
 そして「さあ、いってきまーす」と一人日本語で気合を入れ、玄関のドアの鍵を開けようとした。が、しかし。押しても引いても、鍵をぐりぐりに回しても、ドアが開かない。ホストマザーはとっくに出かけていて、家には私だけだし、このドアが開かないと研修初日から遅刻決定の身である。冷や汗がじわり。
 家から出られないなんて、ありえへん! と、狂ったようにドアの鍵を回していた。後から分かったのだが、ここのドアは開けるときにコツがいり、それを聞いてなかった私には絶対ムリの話であった。
 バスの時間がもうそこまできて、私はある手段に出た。なんと、窓から庭へ出て、そこからまたさくを飛び越え、家の外へ脱出したのである。スーツ姿のアジア人が朝から庭のさくをよじのぼる姿は、きっとあまり見られないであろう。そんな冒険の末、無事にバスに乗り会社へと向かったのであった。

ガイドは女優
 先日、空港へお客様を出迎える研修をしに行った。到着ロビーでお客様の姿を待つ前に、あらかじめ飛行機が予定時刻に到着するかどうかを航空会社へ電話して、確かめる。たいていは飛行機が遅れ、ガイドは2時間、3時間を待機して待つらしい。私はニュージーランド航空に電話をし、フライトを確かめる練習をした。最初は聞き取れず全然わからなかったが、どうやら、「悪天候により当機はキャンセルになりました」と言っている。へ? キャンセル!? つまり、お客様は到着しないという意味で、私たちの仕事はなくなってしまった。空港からそのまま会社へ戻り、何をしてきたのか謎な一日であった。
 ガイドの仕事について勉強を進めるうちに、いかにこの業界がハードで深いかが身にしみる。

イラスト
 「こちらですよ〜」と旗をふりふり、団体を連れ歩くだけがガイドではない。ツアーの予約からホテルや空港の出迎えと手続き、さらにはお土産屋でのセールスなど幅広い。特に私が「自分には合わない」と宣言できるのが、オプショナルツアーの販売営業である。自由時間の組まれたツアーで来るお客に、日帰り観光ツアーの宣伝をし、参加してもらうというノルマ的な営業があるのだ。全然おすすめではないのに、にこにこ笑顔でツアーを売る。仕事なんだから、と言えばそれまでだが、正直者の私には向いてないのだ。
 先輩ガイドさんによると、「もし質問されて困っても、わかりませんとは答えてはダメ。ガイドは女優!私は何でも知ってます! という顔でいること」と教えられた。
 果たしてこの私が女優になれるのか、この仕事が自分に合っているのか。物事とは不思議なもので、実際にやってみないと自分にしっくり合うかそうでないか、何もわからない。だから私はいろいろな世界に触れ、経験を積み、そして考え続けていこうと思う。私らしい生き方とかそんなことを。
 秋に近づくオークランドの空の下で、見えそうで見えない自分の未来を想像しながら…。




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